「建築リニューアル」は、防災、安全・安心、省エネ・省資源、快適・健康、長寿命を目標に、建築ストックの再生・活用を通じて多様な効果を生み出す有効な手段であります。
ところが現状では、国土交通省の公表している「建築物リフォーム・リニューアル調査報告(平成29 年度計)」によると、2017年度の建築物リフォーム・リニューアル工事の受注高の合計は、12兆4,873億円で対前年度比20.6%減で、「住生活基本法」の骨子である既存住宅流通の活性化、リフォーム市場規模を倍増して2020年までに20兆円市場とする目標への逆風とも見えます。
しかし、これを需要の落ち込みと見るのは当たりません。国土交通省のまとめている統計・「分譲マンションストック戸数」で、新築供給戸数の減少に対してストック戸数は右肩上がりの推移はとどまるところを知らず、平成29年度末で約644.1万戸にまで達しております。さらに、マンションの居住人口は約1,533万人と推計しており、これは国民の約1割にあたる人口に相当するといわれております。この分譲マンション戸数が世帯数に占める割合を示す「マンション化率」は、民間の調査で首都圏の伸びが著しく、特に東京都は最も高い数値を示しております。住まいの問題はマンションの問題であり、マンションの問題は東京に集約していると言って過言ではございません。
マンション管理の問題意識はストックの優良化に結実し、さらにこれは非住宅を含めた建築すべての向かうべき方向を示すべく、本書では、その最新の事例を鮮明なカラー写真と見やすいレイアウトで紹介しております。掲載の物件すべてが象徴するのはリフォーム&リニューアルの最新理念・「建築ストックの再生と未来価値の向上」でございます。