新元号の時代が始まり、21世紀も経過して5分の1という節目を迎えた2020年は、東京オリンピック・バラリンピックが開催され、一方で働き方改革関連法の施行など、建築およびその関連分野ではエポックメーキングな転換点となるべき1年でした。それを覆したのは、中国・武漢市に端を発するとされる新型コロナウィルス感染症の蔓延です。
感染症被害は驚異的な勢いで世界規模に拡大し、2021年に臨んでなお、予断を許さない状況にございます。東京五輪が延期に追い込まれ、世界規模で人の移動が制限され、旅客業を中心としてインバウンドに期待を膨らませていた産業は大打撃を被りました。建設業も例外ではなく、着手されて進行していた工事はリフォームと新築とを問わず、感染症流行の第1波とされる段階ですでに工期の遅れ、生産を海外依存していた住宅設備機器類の調達に支障を出し始めております。こうした影響が業績において、次の1年に及ぼす影響はさらに深刻であり、まさにコロナに翻弄されたのが、2020年と言わなければなりません。
しかしながら、ここで銘記しなければならないのは リフォーム&リニューアル(R&R)=建築再生 を取巻く大きな時代の流れには、何ら変わりがないという事実です。都市型の居住形態として不動の位置を占めている集合住宅は、ストックが700万戸に迫る一方で新築の供給も進み、必然的に大規模修繕の時期を迎えます。より喫緊な需要としては、必ず襲来する巨大地震への備えとしての耐震改修です。また、コロナ禍をきっかけとして建築や設備機器の感染症対策という、新たな切り口も形をとり始めております。
「コロナ後」「ウィズコロナ」とも称される2021年、例年通りに上梓する本書でこれからのR&Rが進むべき方向を探っていただければ幸甚でございます。