これまでの四半世紀以上に渡る改修出版活動により、建築再生の考え方、設計・施工技術、関連材料・機器が普及してきているが、建築再生は単に劣化した機能の回復を行う守りの対策にとどまるものではありません。新しい時代の課題に応える手段として、脱炭素、省エネ・省資源、防災、安全・安心、DX、快適・健康、長寿命を目標とし、建築ストックの再生・活用は改修を通して新しい価値とライフスタイルを創造し、多様な効果を生みだす新分野と捉える必要がございます。
また、2050年カーボンニュートラルの実現が、大きな目標に掲げられ、実現に向け、様々な動きが速度を増しております。東京都では、新築住宅への太陽光パネル設置の義務化へ本格的に動き出し、2025年4月の制度施行を目指しております。この帰趨が全国自治体に及ぼす影響は大きく、住宅・建築物分野では脱炭素化に向けたロードマップが示されており、これを支える高性能な建材・住宅設備の供給が求められます。
多方、東京都内だけでも大規模再開発が進み、複合施設などの建設が連続する。こうした動向が新築市場、さらには中古市場に波及することは容易に予想されます。
マーケット自体は堅調に推移するとしても、その抱える問題は多岐に渡ります。住民・ディベロッパー・ゼネコン・管理会社・専門工事会社といった立場によって、もちろんマンションに限らず、建物の立地・構造・築年数などによっても抱える問題は様々であります。これまで「やってる振り」でお茶を濁してきたカーボンニュートラル、 SGDs、DX、GXといったテーマ・目標に対して否応なく対応が求められます。複雑な改修工事現場や改修業界は、経験が優先されるアナログの聖地であったが、突如デジタル実験場と化してきたようでもあります。それ等のツールをどう理解し、それぞれの立場で取り入れることができるか、マーケットという餌は目の前に潤沢にあります。しかしそれを獲得するには、今までのようにただ手を伸ばすだけで入手することが困難になる時代が、目前に来ていおり、どうすれば手に入れることができるでしょうか。
建築改修が新局面を迎えたことは明らかで、本書ではR&Rの優れた事例を紹介しております。これら情報が共有され、「GX・DX推進がひらく建築ストックの未来」へとつながることを期待されます。